▽ お城めぐり

▽ 日本のあちこち
 
日本唯一「スカイレール」
 ト ンネル駅・筒石

 
鉄 道三昧の三が日
 「秘境駅号」で巡る飯田線
 
木次線と芸備線の旅
 伊那と山梨の桜
 
さよなら500系 のぞみ
 苗 代桜と下呂の桜
 
日光滝めぐり
 
横浜の建築と産業遺 産
 
「あさかぜ」「さくら」
 
三井寺の夜桜
 
坂の町・金沢
 
石鎚山登山記録
 
海から見たしまなみ 海道
 
来島海峡大橋塔頂体 験
 
ワンダーランド手柄 山
 
灘のけんかまつりル ポ
 
姫路の地名

▽ Macのある生活

▽ 好きなもの色々

▽ リンク

▽ 過去の日記



★☆  日本唯一の「スカイレール」 廃止直前に乗りました ☆★
 
(2024年4月23日)

このサイトは、MacのFirefoxでの閲覧に最適化されています。
Windows環境なら、Google Chromeを使い、「設定→デザイン→フォントサイズ→小」でご覧ください。

 
<丘を下り、みどり口駅に近づくスカイレールのゴンドラ
(青い枠がついている画像は、クリックすると拡大画像が開きます)

1)丘の上のニュータウンへ

 広島市安芸区にあるJR山陽本線 の瀬野駅と、丘の上のニュータウンを結んでいたユニークな交通機関「スカイレール」が、2024年 4月30日正午発の便で営業終了となり、5月1日に廃止されました
 瀬野駅と東隣の八本松駅の間は、山陽本線で最も急勾配の区間で、鉄道ファンには「瀬野八(セノハ チ)」として知られています。
 そのこともあって、スカイレールのことは以前から知っていたのですが、これまで訪問する機会があ りませんでした。ようやく廃止の1週間前に乗車することができました。
 残念ながら訪問時は小雨模様でした。瀬野駅に近づくと、前方に丘の上へ延びていくモノレールのよ うな軌道が見えてきました。
 スカ イレールの路線は、瀬野駅に直結する「みどり口駅」から、丘の上のひろがる住宅地、「スカイレール タウンみどり坂」にある「みどり中央駅」へ延びています。全長は約1.3kmで、途中に「みどり中 街駅」があります。途中の停車を含めて、所要時間は約5分です。
 住宅地の名前でわかるように、スカイレールはこの住宅地と一体のものとして建設され、1998年 8月28日に開業しました。運行会社は「スカイレールサービス株式会社」で、路線の正式名称は「広 島短距離交通瀬野線」というようです。
 上が「みどり口駅」の全景です。 正面左手の瀬野駅は橋上駅で、改札を出て通路を北側へ進むと、同レベルでみどり口駅の改札につな がっています。
 左の写真の奥に改札があります。「スカイレールサービス株式会社」の表札がかかっているのは、駅 の建物に同社の本社があるためです。

 同社は住宅地を開発した積水ハウスと青木建設(現・青木あすなろ建設)、それにスカイレールを開 発した神戸製鋼所と三菱重工業が主体となって設立されました。
 同社の公式ホームページは、残念ながら見つけられませんでした。
 左は改札の様子です。自動改札機 が2台設けられています。正面奥に見えるのは出発ホームへ上がる階段です。写真には見切れています が、右手に到着ホームから降りてくる階段があり、そちらには改札ゲートはありません。
 正面右に2台並んでいるのが乗車券の自動券売機です。料金は全線均一の170円で、小人は90円 です。
 改札口の周辺には色々なお知らせや注意書きが掲示してあり、運行終了と定期券等の払い戻し に関するお知らせも ありました。
 左は自動改札機のアップです。写 真をさらに拡大してもらうとわかりますが、ICカードが使えるのに、ICOCAなどの交通系IC カードは使えません。使えるのは専用のICカードだけです。「観光客のみなさまへ」という注意書き がありました。非接触型ICカードの導入は、ここが日本で最初だということなのに、その後の ICOCA等の普及に追い越されてしまったようです。
 上に書いた自動券売機もICカードが使えるようでしたが、タッチ式ではなかったため、こちらも専 用のICカード専用かもしれないと思い、現金で購入しました。乗車券を現金で購入したのは久しぶり でした。
 また切符は改札機に投入するのではなく、切符に印字されたQRコードを 読み取らせる方式です。読 み取らせてからバーが開くまで少しタイムラグがあるため、「とびらが開くまでお待ちください」と掲 示されていました。
2)モノレールとロープウェイのいいとこ取り
 改札を通った正面の壁に、ス カイレールの仕組みについての解説が掲示されていました。よくわかるので、拡大して読んでみて ください。
 左の図のとおり、ゴンドラを動かすのロープウェイのような回転しているロープです。駅間はゴ ンドラの台車がロープをつかみ、駅部分ではロープを放して、リニアモーターカーのような仕組み で移動します。
 右の図の台車部分で、重要なのは「握策機」と「リアクションプレート」です。
  「握策機」は文字通り、ロープをつかんだり放したりする部分です。右の写真は、みどり中街駅に 到着するみどり口行きのゴンドラです。写真を拡大すると、ゴンドラから上に延びている「?」型 の腕の先端部分が、手のようにロープをつかんでいるのがわかります。
 そして駅の前後にある「握策ガイド」と「放策ガイド」を通ることで、その動作が行われる仕組 みです。

 上の写真はみどり中街駅を出たゴンドラが、握策ガイドにさしかかるところです。写真を拡大す ると、腕の先端部分の様子がよくわかります。
 握策ガイドを通過した後の写真がこちらです。 遠くなったので少し不鮮明ですが、先端部分の違いがわかりま す。
 車両というかゴンドラの見た目はロープウェイそのものですが、レール周りはモノレールか新交 通システムですね。
  左の写真は、みどり口駅到着前、放策ガイドを通過するゴンドラです。レールの下面を見ると、 ちょうどここからリニアモーターの地上コイルが設置されています。


 上はゴンドラから見た様子です。このコイルと台車のリアクションプレートが電磁石の仕組みで 吸引、反発することで進んで行く仕組みです。
3)思ったより揺れる乗り心地
 改札 付近を観察したあと、8時20分発のみどり中央行きに 乗りました。左は改札から階段を上がったホームの様子。完全な密閉空間で、発車を待つゴンドラの部 分に、ホームドアが開いています。
 廃止が決まって撮影者が増えているのか、「他人を写すな」「駅に到着したらすぐに降りろ」など、撮影マナーの注意表示が ありました。

 ゴンドラは定員25人で、座席は左下の写真のように8席です。乗車時間はわずかなので、簡易な座 席です。乗り込んだのはほかに同好の士が2人と、運行会社の技術スタッフさんだけでした。
 発車 する時は少し前傾姿勢になります。リニアモーター駆動ですが、ゴンドラは台車からピンを介してぶら 下がっているので、ロープウェイのような動きです。加速度は2.5km/h/sとのことで、通勤電 車の加速度と同じくらいです。
 発車するとすぐに急坂を上り、右上の写真のように瀬野駅を見下ろします。右の写真は急勾配の途中 で、下に見えているのは、先の地図では瀬野西1丁目の10番地と11番地の間にある階段です。
 運航速度は時速20km程度とゆっくりですが、予想とは違ってガタガタという揺れがあります。写 真を撮るためにつり革や手すりを持たずに立っていると、不安定でした。
 最初 の急坂を登り切ると、上の写真のようにしばらくは勾配が緩くなり、前方右手にみどり中街駅が見えて います。右の写真は到着直前の様子です。
 「JTB時刻表」にスカイレールは載っていますが、「7〜15分毎、所要約5分」とあるだけで す。「全国鉄道地図帳」には、みどり口-みどり中街が0.7km、みどり中街-みどり中央が 0.6kmと、駅間距離が載っていました。
 両端の駅は同時に出発していますが、下の写真のように、みどり中央発のゴンドラが少し速くみどり 中街に到着していました。
 みどり中街駅を出ると、右下の写真のように大きく右カーブしてまた坂を登ります。
 進行 左手の眼下に、学校が見えます。広島市立みどり坂小学校です。1998年にスカイ レールが開通した時にはまだこの小学校 はなく、子供たちはスカイレールに乗ってふもとの瀬野小学校へ通っていました。このため、小学生専 用車両もあったそうです。
 しかし2011年4月にみどり坂小学校が開校し、小学生が登下校に使うことはなくなりました。そ のことも廃止につながる遠因だったのかもしれません。

 そして軌道は高さを保ったまま、終着駅のみどり中央駅に到着しました。こちら側から見ると、駅は 階段の上にあり、三階建てですが、敷地が傾斜地なので、駅の正面側から見ると二階建てです。
4)緑豊かな住宅地
 駅に 到着したゴンドラの中から前方を見たのが左の写真です。ロープウェイのように、ぐるりと回る仕組み です。右側が発車を待つゴンドラで、「スカイレールタウンみどり坂」の広告付きです。
 下は降車ホームの後ろの窓から、登ってきた軌道を見たところです。急勾配がよくわかります。地理院地図(もう路線が消されています!)で調べる と、みど り中央駅の標高は214mです。一方、みどり 口駅は54mなので、標高差は160mとなります。
 ウィキペティアによると最大勾配は263パーミルで、「ケーブルカー以外の鉄軌道では日本一の急 勾配」とのことです。
 263パーミル(‰)とは、水平 距離1000mに対する高低差が263mということです。ス イスの登山鉄道と比べると、有名なユングフラウ 鉄道などを上回る急勾配になります。
 ちなみにケーブルカーの日本最大勾配は東京・高尾山のケーブルカーで、608‰です。

 さてみどり中央駅の改札を出ると、左下のような絵が出迎えてくれました。ちょっと哀愁を感じま す。駅近くのマンホールも、「ありがとうスカイレール」と いう真新しい絵が描かれていました。
 下の右は駅の正面入り口で、前の道路は坂道になっています。
 駅の 正面には上の写真のように新緑が美しい遊歩道が延びています。ダラダラと上り坂です。駅前道路の右 手側も、上の右側の写真のように上り坂が続き、戸建て住宅が建ち並んでいます。
 先に紹介した地図を見 ると、「スカイレールタウンみどり坂」は上下二段に分かれており、みどり中央駅は上段の手前寄りに あります。もう少し住宅地の中央まで延ばしたほうが良かったのでは、という気もします。

 駅舎の建物は中を通り抜けられるよ うになっており、くぐって裏側へ出ました。そして8時35分発の列車を写したのが右の写真です。
 みどり中央駅の発車時刻表は、 みどり口駅とまったく同じです。「JTB時刻表」には「7〜15分毎」とありましたが、夕方ラッ シュ時は5分ごとの発車です。でも朝のラッシュ時に増発するべきではないのでしょうか。
 左は改札口の様子ですが、「分散乗車ご協力のお願い」と いう掲示がありました。7時32分発に乗るとみどり口に7時37分に着き、瀬野7時41分発の電車 に乗ることができ、広島駅には8時2分に着くことになります。
5)道路との段差ゼロの中間駅
 25 分間の滞在を終え、8時50分発に乗って帰ることにしました。上の写真は急傾斜の途中で、左手は中 央公園です。右手前方にこれから進む軌道が延びており、写真を拡大するとみどり中街駅も見えます。
 みどり中街駅にも降りてみました。左は乗ってきたゴンドラを見送っているところです。朝のラッ シュ時間帯はすぎていますが、さすがに瀬野駅へ向かう方向は満員でした。
 
 下の左側は改札内の様子で、右側は改札の外から見た様子です。みどり口方面行きの乗り場は、駅前 の道路と段差なしでつながっており、道路から30秒で乗車可能です。
 右は 駅前の道路から見た駅の入り口です。橋で駅舎と道路がつながっています。駅は斜面上にあるため、み どり口方面行きの乗り場は三階になっています。みどり中央方面乗り場がある駅の南側から見るとこんな様子で す。
 上の写真で改札を出た正面に、反対側のホームに向かう下りの階段と、エレベーターが見えていま す。

 駅の北側に住んでいる人は、瀬野駅へ向かう朝はすぐに乗れますが、帰ってきた時は階段を下って登 る必要があるわけです。南側に住んでいる人は、行きも帰りも上下移動が必要です。でも駅の南側の人 は、瀬野駅まで歩いても10分程度なので、下り方向は歩くのかもしれませんね。
 左は 上の写真の橋のところからみどり中央方面を見たところです。9時7分発のゴンドラ がやってきました。駅に到着する直前を写したのが、先に握策機を紹介する時に掲げた写真です。

 写真を撮ってすぐに乗り込みました。下の左側のようにすぐに急傾斜を下っていくと、右側のように 瀬野駅が近づいてきました。上りの時と違って支柱が邪魔にならないので、全貌がよく見えます。軌道 の上面の様子もわかります。
6)「瀬野八」を支えた機関区
  瀬野の駅前には、「瀬野八」を支えた機関区を紹介する説明板がありました。説明のように、蒸気機関 車による後押しは1963年で終わり、機関区も1986年に広島機関区に統廃合されてなくなりまし た。
 しかし貨物列車の後押しは今も続いており、広島貨物ターミナルから西条駅まで、かつてはEF67 形電気機関車、現在はEF210形電気機関車が活躍しています。
 瀬野と八本松の間の最急勾配は22.6‰で、急勾配を避けて建設された山陽本線(元の山陽鉄道) では例外的な区間です。その数値を示す「勾配標」を写そうとしましたが、残念ながら「22.2‰」 しか写せませんでした。
 下の右は八本松駅で、橋上駅の隣に1986年まで使われた旧駅舎が残っていました。



日本のあちこちへ戻る