Pilatus鉄道も今回の旅の主要目的地です。何と言っても「世界一の急勾配鉄道」です。これ
は欠かせません。
しかし、氷河急行、ユングフラウ、ゴルナーグラートという三大鉄道と比べると、日本人の姿はゼロに等しいと言えます。
やっぱり鉄道ファンだけに有名なので しょうか。
左の客船でLuzern(ルツェルン)から1時間20分、Alpnachstad(アルプナハシュタット)の桟橋に着
きました。意外に時間がかかってい るのは、直行ではなく、途中で何か所も寄港しているからです。
桟橋から地下道で幹線道路と国鉄の線路をくぐるとPilatus鉄道の駅ですが、その向かい、湖側には国鉄の駅もあり
ます。右の写真ですが、普通列車し か停車しないため、ひっそりしています。
対照的にPilatus鉄道の駅は賑わっています。駅の後ろに車両が見えますが、外形はまんまケーブルカーで
す。このためガイド
ブックの中には、「ピラタス山へ登るケーブルカー」というように書いているものがありますが、あくまでもこれはケー
ブルに引っ張られるのではなく、自分自身がモーターを回して車輪を駆動する電車なのです。
最急勾配は、なんと480パーミル。つまり水平距離1,000mに対
して480mも標高が上がるというもの。スイ スの登山鉄道は日本と比べるとはるかに
急勾配ですが、それでも100-250パーミルで、このPilatus鉄道だけが飛び抜けています。もちろんラック
レールを使っていますが、その型式は、
ラックレールの両側から水平の歯車二つが挟み込む「ロッヒャー式」で、スイスでは唯一の採用です。
ということで、今回乗った鉄道の最急勾配とラック型式をまとめます。(ユングフラウ鉄道はアプト式としていましたが、シュト
ループ式に訂正します)
これを見ると、最急勾配が200パーミル未満は、いずれもスイスパスがあれば無料で乗れます(フルカ山岳蒸気鉄
道は特殊なので例
外)。一方、200パーミル以上になると、無料にはならず、割引きのみです。このため、スイスの登山鉄道とひとまと
めにせず、無料で乗れるのは「山岳鉄 道」、そうでないのは「登山鉄道」と、分けて考えている人もいます。
上はLuzernの交通博物館に展示されている1889年にPilatus鉄道が開通した当時の車両です。この時
は電車ではなく、なんと蒸気機関でし
た。右の写真は車両の右下部分を拡大したものですが、中央にある水平の歯車がわかるでしょうか。これがロッヒャー式
です。
Pilatus山は、鉄道の開通年月でもわかるように、Luzern近郊の行楽地として古くから
親しまれていま
す。そのゴツゴツした姿は、Luzernの街からよく見えます。山の名前は、キリストを処刑したローマ人の総督、ポン
ティウス・ピラトゥスにちなみ、彼の
亡霊が各地をさまよった後に住み着いている「魔の山」として、長らく人が寄りつかなかったといいます。
この写真は今回宿泊したホテルから眺めた朝の姿。デジカメの望遠でこれくらい大きく見えます。中央のピークが
Esel(エーゼ
ル)で2,119m、その右側の鞍部に白い小さなゴミのようなものが見えるのが、頂上の鉄道駅(兼ホテル)です。こ
の写真で言うと、鉄道は山の向こう側に
なります。鞍部右側のピークがOberhaupt(オーベルハウプト)で、2,106m。その向こう側、こちらから
は見えない少し離れたところに
Pilatusの最高峰で2,129mのTomlishorn(トムリスホルン)があります。
ところで、ちょっと脇道にそれますが、Pilatusという地名は、日本語ではピラタスと書かれたり、ピラトゥス
やピラトスとなったりします。ネットで
検索するとピラトゥス派が多いようですが、辻本はピラタス派です。というのは、長野県の蓼科高原に北横岳という山が
あり、高校の修学旅行で登ったのです
が、そこに至るロープウェイが「日本ピラタスロープウェイ」という名前でした。もちろんその時、スイスにピラタスと
いう山があるんだということを知り、そ
のイメージが強いためです。(ちなみに、このロープウェイは現在は「ピラタス蓼科ロープウェイ」と名前が変わってい
ます。)
さてPilatus山は特徴的な岩山であることから、ドラゴンが住む山との伝説が生まれました。鉄道のロゴマーク
にもドラゴンが使われていますが、パン
フレットやお土産品にも、漫画チックなドラゴンがあちこちに登場しています。
上の写真はPilatus鉄道の窓口でもらったパンフレットの絵地図。無料のパンフにしてはよくできた地図です
が、所々に小さなオレンジ色の物体が見え
ます。拡大したのが右側の写真。これはピーク部分の拡大ですが、ドラゴンが双眼鏡をのぞいています。ほかのドラゴン
もいろんな格好をしています。それにし
ても、このドラゴンは火を吐いていることから、ドラゴンというよりは、サラマンダー(火竜)かもしれません。
またこのパンフレットの標高は、他のガイドブックや国土地理院の地図とは少し違っています。
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ところでPilatusは、乗り物ファンにとっては楽しいところで、登山電車のほかに船と
大小2種類のロープウェイ
が楽しめます。左の図はPilatus鉄道のHPから借用しましたが、このように周遊コースを
造れるのが魅力になっています。
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今回は図の左方向から鉄道でやってきたので、Alpnachstadで降りればPilatus鉄道にすぐ乗り継ぐ
ことが出来ます。しかしそれでは船が乗
れない上に、AlpnachstadからLuzernまでの鉄道線を乗り残すことになるので、いったん鉄道で
Alpnachstadを素通りして Luzernに向かい、改めて船で戻ることにしました。
Luzernの駅前にある湖畔の船乗り場では、周遊コースの切符が売っています。もっとも
Vierwaldstattersee(フィーアヴァルトシュ
テッテーゼー=四つの森の国の湖。長いので、通称Luzern湖)の船と、最後のKriens(クリエンス)から
Luzernへ戻るトロリーバスはスイス
パスなら無料なので、わざわざ周遊切符にしなくても同じなのかもしれません。でも、その都度切符を買う手間が省ける
と思い、周遊切符を頼みました。スイス
パスを提示すると、窓口の女性は「船とトロリーバスの分は無料になってます」と言い添えてくれました。