スイス鉄道の旅
2002.08公開

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港 の見える街から
(辻本のホームページ)



ピラタス鉄道 または ピラトゥス鉄道
(その1)




(岩山に張り付くようにして急な線路を走るピラタス鉄道の電車)

★ 世界一の急勾配

 Pilatus鉄道も今回の旅の主要目的地です。何と言っても「世界一の急勾配鉄道」です。これ は欠かせません。 しかし、氷河急行、ユングフラウ、ゴルナーグラートという三大鉄道と比べると、日本人の姿はゼロに等しいと言えます。 やっぱり鉄道ファンだけに有名なので しょうか。
 左の客船でLuzern(ルツェルン)から1時間20分、Alpnachstad(アルプナハシュタット)の桟橋に着 きました。意外に時間がかかってい るのは、直行ではなく、途中で何か所も寄港しているからです。
 桟橋から地下道で幹線道路と国鉄の線路をくぐるとPilatus鉄道の駅ですが、その向かい、湖側には国鉄の駅もあり ます。右の写真ですが、普通列車し か停車しないため、ひっそりしています。

 対照的にPilatus鉄道の駅は賑わっています。駅の後ろに車両が見えますが、外形はまんまケーブルカーで す。このためガイド ブックの中には、「ピラタス山へ登るケーブルカー」というように書いているものがありますが、あくまでもこれはケー ブルに引っ張られるのではなく、自分自身がモーターを回して車輪を駆動する電車なのです。
 最急勾配は、なんと480パーミル。つまり水平距離1,000mに対して480mも標高が上がるというもの。スイ スの登山鉄道は日本と比べるとはるかに 急勾配ですが、それでも100-250パーミルで、このPilatus鉄道だけが飛び抜けています。もちろんラック レールを使っていますが、その型式は、 ラックレールの両側から水平の歯車二つが挟み込む「ロッヒャー式」で、スイスでは唯一の採用です。

 ということで、今回乗った鉄道の最急勾配とラック型式をまとめます。ユングフラウ鉄道はアプト式としていましたが、シュト ループ式に訂正します

鉄道名
0/00
ラック形式

ピラタス鉄道

480

ロッヒャー

リ ギ鉄道・フィツナウ線

250

リッゲンバッハ

ユ ングフラウ鉄道

250

シュトループ

ヴェ ンゲルンアルプ鉄道

250

リッゲンバッハ

リ ギ鉄道・アルト線

200

リッゲンバッハ

ゴルナーグラート鉄道

200

アプト

フルカ・オーバーアルプ 鉄道・支線

179

アプト

ツェルマット鉄道

125

一部アプト

ベ ルナー・オーバーランド鉄道

120

一部リッゲンバッハ

国鉄ブリューニク線

120

一部リッゲンバッハ

フルカ山岳蒸気鉄道

118

一部アプト

フ ルカ・オーバーアルプ鉄道・本 線

110

一部アプト

レー ティッシュ鉄道

70

なし

レッチベルク鉄道

27

なし

 これを見ると、最急勾配が200パーミル未満は、いずれもスイスパスがあれば無料で乗れます(フルカ山岳蒸気鉄 道は特殊なので例 外)。一方、200パーミル以上になると、無料にはならず、割引きのみです。このため、スイスの登山鉄道とひとまと めにせず、無料で乗れるのは「山岳鉄 道」、そうでないのは「登山鉄道」と、分けて考えている人もいます。


 上はLuzernの交通博物館に展示されている1889年にPilatus鉄道が開通した当時の車両です。この時 は電車ではなく、なんと蒸気機関でし た。右の写真は車両の右下部分を拡大したものですが、中央にある水平の歯車がわかるでしょうか。これがロッヒャー式 です。

★ドラゴン伝説の山

 Pilatus山は、鉄道の開通年月でもわかるように、Luzern近郊の行楽地として古くから 親しまれていま す。そのゴツゴツした姿は、Luzernの街からよく見えます。山の名前は、キリストを処刑したローマ人の総督、ポン ティウス・ピラトゥスにちなみ、彼の 亡霊が各地をさまよった後に住み着いている「魔の山」として、長らく人が寄りつかなかったといいます。

 この写真は今回宿泊したホテルから眺めた朝の姿。デジカメの望遠でこれくらい大きく見えます。中央のピークが Esel(エーゼ ル)で2,119m、その右側の鞍部に白い小さなゴミのようなものが見えるのが、頂上の鉄道駅(兼ホテル)です。こ の写真で言うと、鉄道は山の向こう側に なります。鞍部右側のピークがOberhaupt(オーベルハウプト)で、2,106m。その向こう側、こちらから は見えない少し離れたところに Pilatusの最高峰で2,129mのTomlishorn(トムリスホルン)があります。

 ところで、ちょっと脇道にそれますが、Pilatusという地名は、日本語ではピラタスと書かれたり、ピラトゥス やピラトスとなったりします。ネットで 検索するとピラトゥス派が多いようですが、辻本はピラタス派です。というのは、長野県の蓼科高原に北横岳という山が あり、高校の修学旅行で登ったのです が、そこに至るロープウェイが「日本ピラタスロープウェイ」という名前でした。もちろんその時、スイスにピラタスと いう山があるんだということを知り、そ のイメージが強いためです。(ちなみに、このロープウェイは現在は「ピラタス蓼科ロープウェイ」と名前が変わってい ます。)

 さてPilatus山は特徴的な岩山であることから、ドラゴンが住む山との伝説が生まれました。鉄道のロゴマーク にもドラゴンが使われていますが、パン フレットやお土産品にも、漫画チックなドラゴンがあちこちに登場しています。
 上の写真はPilatus鉄道の窓口でもらったパンフレットの絵地図。無料のパンフにしてはよくできた地図です が、所々に小さなオレンジ色の物体が見え ます。拡大したのが右側の写真。これはピーク部分の拡大ですが、ドラゴンが双眼鏡をのぞいています。ほかのドラゴン もいろんな格好をしています。それにし ても、このドラゴンは火を吐いていることから、ドラゴンというよりは、サラマンダー(火竜)かもしれません。
 またこのパンフレットの標高は、他のガイドブックや国土地理院の地図とは少し違っています。

 ところでPilatusは、乗り物ファンにとっては楽しいところで、登山電車のほかに船と 大小2種類のロープウェイ が楽しめます。左の図はPilatus鉄道のHPから借用しましたが、このように周遊コースを 造れるのが魅力になっています。

 今回は図の左方向から鉄道でやってきたので、Alpnachstadで降りればPilatus鉄道にすぐ乗り継ぐ ことが出来ます。しかしそれでは船が乗 れない上に、AlpnachstadからLuzernまでの鉄道線を乗り残すことになるので、いったん鉄道で Alpnachstadを素通りして Luzernに向かい、改めて船で戻ることにしました。
 Luzernの駅前にある湖畔の船乗り場では、周遊コースの切符が売っています。もっとも Vierwaldstattersee(フィーアヴァルトシュ テッテーゼー=四つの森の国の湖。長いので、通称Luzern湖)の船と、最後のKriens(クリエンス)から Luzernへ戻るトロリーバスはスイス パスなら無料なので、わざわざ周遊切符にしなくても同じなのかもしれません。でも、その都度切符を買う手間が省ける と思い、周遊切符を頼みました。スイス パスを提示すると、窓口の女性は「船とトロリーバスの分は無料になってます」と言い添えてくれました。


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