この鉄道の魅力について語るためには、その地理的環境と、歴史を知ることが不可欠です。まず次の
地図を見てくださ い。
Realp(レアルプ)からGletsch(グレッチュ)へ至る細いギザギザ付きの路線が今回乗ったDFB。
Andermatt
(アンデルマット)からRealpを経てトンネルでOberwald(オーバーヴァルト)へ至る太い線で描かれた路
線は、フルカ・オーバーアルプ鉄道 (FO)です。しかし、かつてはDFBのルートがFOの本線でした。
このルートはサンモリッツなどのエンガディン地方と、ツェルマットなどのヴァレー地方をつなぐ重要路線。フルカ峠
から東はライン川沿線、西はローヌ川沿 線という、ヨーロッパの分水嶺を越える路線でもあります。
そしてローヌ川の源流部には、ローヌ氷河があり、これが「氷河急行」の名の由来になっています。西側からは
1914年6月30日(7月1日説もあり)に
氷河の手前にあるGletschまで開通。1926年6月19日にはAndermattから東の
Disentis(ディセンティス)までが開通。そして7
月3日(4日説も)にはGletschから氷河の近くを通り、フルカ峠を全長1874mのトンネルで抜け、
Andermattに至る路線も開通しました。
1930年6月26日(22日説も)には、Zermatt(ツェルマット)からSt.Moritz(サンモリッツ、
ザンクト・モリッツ)まで氷河急行が走
り始めています。1942年7月1日(9月1日説も)には電化が完成しています。
【追加】この部分について、辻本が現在最も信頼して
いる資料である 「Schienennetz
Schweiz」によると、峠の西側のBrigからOberwaldまでは1914年ではなく、1915年の6月1
日に開通し、7月1日には
Gletschまで開通区間が伸びています。そして1926年の7月4日にGletschからDisentisまで
開通したことになっています。ちょっ と、上に書いたものと違っていますね。
またOberwald-Realp間の電化完成は1942年7月1日となっています。(峠部分の両側は、それ以前
に電化されています)。(2006年9月19日)
ちょっと話がそれますが、どうして資料によって開通の日付
に異同が生じるか
というと、「開通式典」と実際に最初の列車が走る日が、必ずしも同じ日とは限らないと言う事情があるからだと思
います。そのあたりを厳密に見極めないと、
どの時点をもって「開通」と呼ぶのかで、日付が変わってきます。もちろん、単純な記述ミスもあるでしょう
が……。
上の例で言うと、「氷河急行」の公
式ページの中の「歴史」を見ると、氷河急行が走り
始めたのは1930年
6月22日のように読めます。ところが「処女列車」の写真には「6月26日」との日付があります。このあたり、
もっと詳しい資料が欲しいところです。(2004.01.09追記)
改めて公式ページの「歴史」を読み直してみると、氷河急行が走り始めたのは6月25日となっています。書き直
されたのかな。それとも前に読み間違えたの かな。(2006年9月19 日追記)
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ところがフルカ峠は豪雪地帯で、冬季は運休をせざるをえません。このためFOはフルカ峠に
15.4kmの長い新トン
ネルを建設。1982年6月25日には新トンネルの開通式が行われ、氷河に近い旧線を列車が
走ったのは、前年の10月12日までとなりました。それ以来、
「氷河が見えない氷河急行」の状態が続いています。
左の写真は氷河急行の窓辺に描かれている路線の断面図。RealpとOberwaldの間
の、路線が通っていない高い山が旧線のルートです。旧線の最高
地点はトンネル内の2165mです。
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旧線が廃止になっても氷河に沿ったルートを惜しむ声が高く、早くも1983年には旧線を守るための国際的なボラン
ティア組織が結成され、1985年には 私鉄の免許を取得しています。
1992年7月11日に最初のRealp-Tiefenbach(ティーフェンバッハ)間3.66kmが開通。
93年7月30日には峠の手前の
Furka(フルカ)まで3.34kmが開通。そして2000年7月14日にはトンネルを抜けてGletschまで
の5.89kmが開通しました。残る
Gletsch-Oberwald間4.95kmについても復元の工事は進められており、2006年の開通を目指し
ています。
【2009年7月6日・追加】
「上で2006年の開通を目指しています」と書い
たのに、今に至る
まで開通のニュースを聞きません。それで改めてDFBのページを探してみると、地図の中に「Gletsch-
Oberwald間のRe-openingは August2010」と書いてありました。
予定よりも4年遅れていますが、それでも来年8月ですから、あと1年ちょっとです。応援したいですね。
【2010年1月11日・追加】
スイス政府観光局のホームページによると、「2010年のシーズンから運行開始」とあります。DFBのホームペー
ジに出ている2010年スケジュールに はまだ新規開通の情報は載っていませんが、近く明らかになると思います。
それでは前置きはこのくらいにして、次のページからDFBの紹介です。