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パリの橋(2016 年3月)
Les Ponts de Paris
(その2・ポンヌフから上流へ)

(青枠の写真は、クリックすると大きい写真が開きます)



上の写真は芸術橋(ポンデザール)より見たポンヌフの全景。
その1でも紹介しましたが、ポンヌフの全景はこれだけなので、再掲します。
画面のすぐ上に朝日があり、セーヌ川がきらめいています。
橋がまたいでいるのはパリ発祥の地であるシテ島です。
建物の上にサント・シャペルの尖塔がのぞいています。



その2では、ポンヌフの上流側、シテ島とサンルイ島に架かる橋を紹介します。
位置関係は上の地図の通り。
ポンヌフとプチポンの間、サンミシェル橋も重要な橋で、渡ったのに写真は撮り忘れです。残念。

橋の名前のあとは、現在の橋の開通年、全長、全幅。
データは、「Larousse Paris」(2002年)によりました。
参考文献によってデータは諸説あるので、参考程度に見て下さい。
その1・芸術橋から下流へ)はこちらです。

  ▽ポンヌフ Pont-Neuf 1606 年(1854年補修)、238m、20.5m
  

シテ島の西端をまたいで、セーヌの両岸をつなぐこの橋は、
「ポンヌフ(新橋)」という名前とは裏腹に、パリで最も古い橋です。
完成はした年については1604年や1607年としている本もあります。



もうすこし近づくと、橋脚部分の上の張り出しがよくわかります。
右岸側は石造りの7連アーチです。
橋の工事は、アンリ3世時代の1578年に始まり、30年近くかかってアンリ4世時代に完成しました。
ポンヌフがそれまでの橋と違っていたのは、橋の上に建物がない初めての橋だったということです。
このため橋の上はパリ市民のたまり場、社交場として賑わったそうです。



橋がシテ島にかかっている部分には、そのアンリ4世の騎馬像が建っています。
アンリ4世が暗殺された後、妃のマリー・ド・メディシスによって1614年に建てられました。
しかしフランス革命で破壊され、1818年に再建されています。

橋の欄干が半円形に広がっている部分には、かつて小さな店舗がありましたが、
19世紀の改修ですべて取り払われました。

  

右岸の下流側には、左の写真のように「パリの歴史」の解説版が立っています。
建設については「1578年5月31日に、アンリ3世が最初の基礎を置き」とあり、
完成したのは「1606年7月8日」となっています。

右は橋の上の街灯。右側の男性が立っているところが半円形の張り出し部分で、
街灯はその両側に設置されています。風格のある姿です。
右側奥にアンリ4世像が見えています。



これは右岸側の橋を上流からみたところです。
右岸から2番目のアーチ部分には、1608年にポンプ室が設けられ、ルーブル宮などに水を送っていました。
1813年に姿を消した建物の正面には、聖書の一場面、
井戸の前でキリストとサマリア人の女(サマリテーヌ)が出会う場面の彫刻が飾られていました。
このためポンプ室は「サマリテーヌ」とよばれ、その名前は今、右岸にある百貨店に残っています。


  ▽両替橋 Pont au Change 1860年、103m、30m


シテ島と右岸を結ぶ両替橋(シャンジュ橋)も、長い歴史を持つ橋です。
ローマ時代にも同じ位置に橋があったとされ、
記録の残る9世紀以降には、何度も架け替えられています。
両替橋の名は、橋の上で両替屋が営業していたからとされています。
1141年にルイ7世が両替所の常設を命じ、他の場所での両替を禁止したようです。

1647年には7径間の石造アーチが作られました。
上の写真は上流側から見たところ。
左手のシテ島にある、塔が並ぶ建物はコンシェルジュリー。
フランス革命では牢獄として使用され、
マリー・アントワネットらもこの橋を渡ってコンシェルジュリーへ移されました。

1860年に3径間の現在の橋に架け替えられました。



現在の橋の側面には、ナポレオン1世を象徴する「N」の文字が月桂樹に囲まれて取り付けられています。
向こう側にポンヌフが重なって見えています。


 
橋の右岸側はシャトレ広場。右手の大きな建物は市立劇場。
広場をはさんで反対側にはシャトレ劇場が向き合っています。
正面の塔は、サンジャックの塔です。


  ▽ノートルダム橋 Pont Notre-Dame 1912年、 105m、20m


この橋はローマ時代からの歴史を持っています。
現在の左岸側のサンジャック通りからプチポン(小橋)と渡ってシテ島に入り、
かつてはグランポン(大橋)と呼ばれたこの橋で右岸に渡り、サンマルタン通りへ続く道筋は、
パリで最も古いメーンストリートです。
何回もの落橋と再建を繰り返し、現在の橋は1912年に完成しました。

その前の橋は1853年12月に完成した5連の石造アーチでした。
しかし船の通行の邪魔になるため、中央の3連を1つの大きな鉄製アーチに替えたのが現在の橋です。
写真の右手奥には、ノートルダム寺院が見えています。



アップを見ると、アーチ部材と橋桁を結ぶ支柱は、きちんとデザインが施されています。
よく見えませんが、鉄製の欄干のデザインも優美です。

   
  ▽ルイ・フィリップ橋 Pont Louis Philippe 1862年、 100m、15.2m

サンルイ島と右岸を結ぶこの橋は、中心部にありながら地味な橋です。
その歴史は1833年、ルイ・フィリップ王が架けた吊り橋に始まります。
1860年から2年かけて現在の石橋が架けられました。
右岸側の橋のたもとに見える大きな建物は、パリ市役所(オテル・ド・ヴィル)です。



上はアップにしたところ。向こうにアルコル橋とノートルダム橋が重なっています。
橋の側面には円形の飾りがつけられていますが、説明する資料が見当たりません。


  ▽マリー橋 Pont Marie 1635年(1670年、1741年、 1851年改修)、92m、22.6m


サンルイ島と右岸を結ぶこの橋は、何回もの改修を受けながらも、
1635年に完成した当時の古い姿を保っています。
完成した時は、橋の上に建物が並ぶ「家橋」でした。
その後、1658年の洪水でサンルイ島側の2連が流され、1670年に修復。
さらに1740年にも大洪水があったため、翌年にかけて橋の上の建物がすべて取り壊されました。
1851年には路面を下げる改修が行われています。
それでも、橋の中央部が高くなった古い形の面影が残っています。

橋の側面につけられたペディメント(三角破風)のついたローマ神殿風の意匠や、
くちばしのような特徴的な橋脚などは、1635年当時のままだということです。

 

上は、マリー橋からルイ・フィリップ橋を望んだところ。
街灯の根元には、船の文様が描かれています。
パリ市の紋章に描かれる船とは違い、櫂をもった帆船です。
櫂の数は違いますが、アレクサンドル3世橋の下流側中央にあった紋章と似ています。
やはりパリに関係する図柄なのでしょうか。


  ▽ドゥーブル橋 Pont au Double 1883年、38m、20m


ノートルダム寺院の正面、シテ島と左岸を結ぶこの橋は、単径間の鉄製アーチ橋です。
この橋の前身は1625年に架けられ、橋の上には近くにある市立病院の増設病室が建ち並んでいたそうです。
また馬に乗ったまま橋を渡る人は、通行料が徒歩の場合の2倍(ダブル)だったことから、橋の名が付きました。



現在の橋は、ノートルダム寺院のそばにあるため、いつも観光客で賑わっています。
シテ島と左岸の間は川幅が狭いため、他の橋もそうですが、船の通行を妨げないよう単径間の橋が多いです。


  ▽プチポン Petit Pont 1853年(1937年拡幅)、32m、20m


小橋との名前の通り、セーヌ川に架かるパリの橋では最も短い橋ですが、
ノートルダム橋のところで述べたとおり、最も古い歴史を誇る橋でもあります。
石造の単径間アーチ橋で、目立った装飾のない簡素な橋です。
後ろに見える立派な建物はパリ警視庁です。

  ▽参考文献 
   

「橋を楽しむパ リ」
1997年7月30日。丸善
四六判、158ページ、1400円
泉満明 著

 セーヌ川を上流から下流へと船で下りながら、橋のエピソードを紹介していく形式。写真は すべてモノクロだが、歴史に偏重しすぎず、コンパクトに紹介している。


「パリの橋」
1984年10月10日。グラフ社
四六判、284ページ、1300円
北嶋広敏 著

 「橋を楽しむパリ」とは違い、「橋はパリの歴史の目撃者」との立場から、歴史的な記述が 中心で、橋にまつわるエピソードが詳しく述べられている。

「パリの歴史(新 版)」
2002年7月30日。白水社
新書判、186ページ、951円
イヴァン・コンボー、小林茂訳

 橋の解説書ではないが、パリの歴史を完結にまとめている。巻末の「解説付き地名索引」も便利で、 多くの橋が取り上げられている。


「Art & Architecture Paris」
2011年。Ullmann Publishing
A5変判、480ページ
Martina Padberg著

 辻本が持っているのは2008年版で、アレクサンドル3世橋が表紙になっている。美術と建築の専 門書のため、アレクサンドル3世橋の解説は詳しい。

「Larousse Paris」
2002年1月。Larousse
A4変判、360ページ
Larousse編

 百科事典や辞書で有名なラルースによるパリの百科事典。主な橋の紹介のほか「Paris in Depth」というデータ集で、34橋の簡潔な歴史とデータを紹介している。

「セーヌに架かる 橋」
1991年。JR東日本
B4変判、234ページ
東京ステーションギャラリー編

 東京駅の美術館で開かれた開館3周年記念展の図録。橋を描いた昔の絵の紹介が中心で、橋の歴史に ついての解説も掲載。往時の姿を知ることができる。

 
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