★ Rollei35の歴史

 Rollei35が生まれた年、これは解説書によって1966年から68年まで、幅があります。
 もちろん、発表されたときと、実際に発売が始まったとき、さらには日本での発売が始まったときには、それぞれタイムラグがあるでしょう。ここでは朝日ソノラマ社の「クラシックカメラ専科」第16号、「コンパクトカメラ特集号」の記述に従い、66年誕生説を採用します。というのは、同誌の説明の中で、67年に一部改良されているとの記述があるからです。

 ドイツの有名なカメラ見本市「フォトキナ」で発表されたようですが、世界のカメラ業界に衝撃をあたえました。このころ日本では1959年に生まれたオリンパスのハーフサイズカメラ「オリンパスペン」シリーズが一時代を築いていましたが、35ミリフルサイズでありながら、ハーフサイズカメラより小さいRollei35の登場が、ハーフサイズ時代を終わらせる結果となります。
 ペンを開発したオリンパスの桜井栄一さんは、「ズイコー夜話-オリンパスカメラ外史」という大変面白い本のなかで、Rollei35をこう評しています。
 「凝った高級カメラで沈胴式。撮影操作の簡易さではペンの敵ではなかったが、携帯時の大きさはペンより小さい。フルサイズでもここまではいくよということを、ドイツ魂が見せつけたようなカメラであった。昭和42(1967)年のことである。」

★ Rollei35の外観

【特徴的な正面のダイヤル】
 Rollei35の外観を特徴づけるのは、なんと言っても正面のレンズの両側に並んだ二つのダイヤルでしょう。

 向かって右がシャッタースピードを設定するダイヤル、左が絞りを設定するダイヤルです。
 シャッターダイヤルには、フィルムの種類を示しておけるマークがあります。これは単に示すだけ。絞りダイヤルにはフィルム感度を設定する指標があり、こちらは露出計と連動しています。絞りダイヤルには下にロックレバーもあります。
 Rollei35のロゴの左側の丸い穴が露出計のCdSの窓。ファインダーは銀が蒸着してあるのか、鏡のように見え、撮影する辻本の姿が映っています。


 当時のコンパクトカメラ、というかライカのような「フォーカルプレーンシャッター機」に対する「レンズシャッター機」は、その名の通り、レンズの筒そのものに、シャッター速度と絞りのメカニズムがついていました。しかしそれではレンズの筒(鏡胴といいます)が太くなり、携帯に便利なように鏡胴をボディに引っ込める「沈胴式」を採用しても、先端部のメカニズム部分が出っ張ってしまうことになる。
 このため、Rollei35では、鏡胴部にはシャッターと絞りの羽根だけとし、メカニズム部分はボディの前面に薄く分散配置する「平面展開シャッター」としたわけです。

【使いやすさよりコンパクトさを優先?】
 次の特徴は、フィルムの巻き上げレバーが左手側にあることです。これは内部で最も場所をとるフィルムをどこに納めるかという問題から導かれた結果でしょう。これを使いにくいと評する本が多いようですが、辻本は使いにくいと感じたことはありません。むしろ右手でシャッター、左手で巻き上げと、両手が分業することで、素早く次の撮影に移れるような気もします。巻き上げるための左の親指が、ファインダーを覗く目の前を横切ることさえ気にならなければ、決して欠点ではありません。

 鏡胴を引き出して撮影状態にしたところ。シャッター速度と絞りのダイヤルの周囲には数字が書かれ、上から読みとれます。シャッター速度はB(バルブ)と1/2秒-1/500秒。絞りは3.5-22です。
 また鏡胴の先端のピントリングには距離目盛りがあり、これを廻して目測でピントを合わせます。最短撮影距離は0.9mと、ちょっと遠めなのが残念。2mと6mは文字が赤くなっている。下側にはフィート表示も付いている。
 二重の輪に見えるのがシャッターボタン。その左上のボタンは、鏡胴を沈胴させるときのロック解除用です。
 オレンジの針と白い針が見える窓が、追針式の露出計です。


 ただし、ストロボを取り付けるためのアクセサリーシューがカメラの上部ではなく、底にあるのは、やはり不便です。人物撮影でストロボを使うと、下から光があたることになり、不自然なしゃしんとなります。このためストロボ撮影時は、カメラを縦に構えることにしています。

 底の左側には巻き戻しクランクが折り畳まれており、起こすとかなりの大きさで使いやすいです。
 中央は三脚用のねじ穴で、その周囲にフィルムの撮影枚数を示すカウンターの窓があります。
 右がアクセサリーシューで、接点付きのホットシューになっています。このため、現在の市販のストロボの大半が装着できます。
 三脚用ねじ穴との間に、裏ぶた着脱用のロックレバーがあります。


 ピント合わせが目測式であり、距離計が内蔵されていないのは、小さくするためにやむを得なかったのでしょう。でも、目測式でもそんなに困りません。意外とシャープに写るものです。
 写真は、被写界深度といって、狙った地点の前後にピントの合う範囲が決まっています。これは、絞りを絞り込むほど、またレンズの焦点距離が短いほど、また狙った地点が遠いほど、ピントの合う範囲は広くなります。このため、40ミリ程度のレンズなら、絞りを8、距離を3mに合わせておけば、スナップ写真ではたいていピントが合います。
 近接撮影ではこうはいかないので、Rollei35の最短撮影距離が0.9mどまりなのも、ここに原因があるのかもしれません。


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