CONTAX T 

現在、ひとつのジャンルを作っている高級コンパクト機の流れは、
1990年11月に発売されたCONTAX T2に始まるというのがほぼ定説ですが、
それに先立つこと6年半、84年3月に発売されたのがこのカメラ。
いわば「早すぎた高級コンパクト機」だったわけです。

何せ、本体価格が8万7000円。専用ストロボが9000円、ケースが3000円と、
セットで買うと9万9000円。
辻本は発売当初から欲しかったのですが、とても買えませんでした。
その代わりにOLYMPUS XAを買ったのです。

仲間うちではXAのことを、「プアマンズT」と呼んだりしましたが、
今思うと、XAに対して失礼な言い方でした。

結局、91年7月になって程度のいい中古品を購入しましたが、
11万8450円と、かえって高くつきました。

これほど、高いカメラだったのは、凝りに凝った作りがされているからです。
そもそも、このカメラはそれまでコンタックスブランドを引き継いでいたヤシカと、
京セラが合併して最初に発売されたカメラで、
京セラとしても力を入れていたわけです。

デザインは、あの「ポルシェデザイン」が担当しました。
ボディは、チタンも考えられたそうですが、
当時はまだ技術が伴わず、アルミニウム合金製です。
それでも、さすがに美しいデザインです。
とくに極力出っ張り部分をなくした作りは、手が込んでいます。
また、ミノックスの35ミリシリーズを思わせる前ぶたが特徴です。

機能的には、絞り優先AE、二重像合致式距離計連動、外付け専用ストロボと、
OLYMPUS XAとよく似ています。
ただ、絞りにはぜいたくな7枚羽根を使ったり、
レンズはツアイスのSonnarT*38ミリF2.8をおごったりと、
高級カメラの名に恥じないものがありました。

また特筆すべき機能として、ストロボを使う場合でも、自由に絞りが選べました。
ふつうこのクラスでは、ストロボを使用すると、絞りが固定されてしまいます。
OLYMPUS XAもそうでした。
しかしCONTAX Tでは、一眼レフのTTLのように絞りが選べ、
撮影の自由度が大きく広がるのです。

このカメラは購入後、何一つトラブルはなく、
現在も時々取り出しては撮影に使っています。
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