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★ 横浜の建築と産業遺産(2005年3月12日)
(その2)

(16本のコリント式列柱が美しい横浜郵船ビル)

4)建築遺産が集まる馬車道周辺

 赤レンガパークのある新港地区から、万国橋を渡ります。右手にはみなとみらい地区の高層ビルが 一望できます。
 ランドマークタワーの後ろの3つは、左から日石横浜ビル(30階、133m)、横浜銀行本店 (28階、153m)、三菱重工ビル(33階、152m)。

 右側のつながったビルは左からクイーンズタワーA棟(36階、174m)、B棟(28階、138m)、C棟(21階、 109m)。観覧車(コスモクロッ ク)の向こう側にあるのはパン・パシフィックホテル横浜(22階、105m)です。

 万国橋からしばらく歩き、海岸通の交差点には、横浜第二合同庁舎の堂々たる姿が 見えます。
 1926年(大正15年)完成のRC造4階建て。かつては横浜生糸検査所として、輸出される生糸 の品質管理を行っており、「キーケン」と呼ばれて親しま れていたそうです。設計は遠藤於兎。

 老朽化のため1990年に取り壊されたのですが、1993年に高層ビルの新庁舎を取り巻く形で復元されました。辻本は 昔のままが残っていると思ったほど で、歴史遺産の保存法としては、良くできたやり方だと思います。

 第二合同庁舎の南側は、みなとみらい地区と結ぶ新しい道が開通しています。その道に面して、左の写真のように第二合同 庁舎と似た建物が残っています。こ れは帝蚕倉庫の本社事務所で、かつては生糸検査所の倉庫事務所でした。その左に見える白いビルは帝 蚕倉庫の第一帝蚕ビル。1928 年(昭和3年)の建築です。

 上の右の写真は、帝蚕倉庫本社事務所の向かい、新しい道路と本町通のY字路の中に建つ、横浜アイランドタワー(22 階、119m)です。 トスカナ式列柱のバルコニーが目立つ部分は、横浜銀行本店別館でした。元々は第一銀行横浜支店として1929年(昭和4 年)に建てられたものです。本来 建っていた場所に新しい道路が出来ることになったため、1995年に現在地までバルコニーの部分を曳屋して保存。さらに アイランドタワーと接続する部分が 復元されました。大変シンボリックな建築なんですが、両側を広い大通りに挟まれ、ぽつんと淋しげに残っている感じがしま す。

 万国橋からの通りは、本町通りを越えると「馬車道」と名前が変わります。通りの入り口左側には、1929年建築の旧富 士銀行横浜支店・元安田銀行横浜支 店があります。現在は横浜市市民活動共同オフィスとなっていますが、この日は修復作業中でシートが架かっており、写真は 撮れませんでした。それにしても、 銀行は良く名前が変わるので、建物の旧称を示すのも難しいです。

 で、馬車道を少し歩くと、横浜の歴史建築の代表のひとつ、神 奈川県立歴史博物館に出会います。上の右の写真です。これは1904年(明治37年)に横浜正 金銀行本店として建てられた石造3階建て で、設計は赤レンガ倉庫と同じ妻木頼黄。正面にドームをいただくネオバロック式の本格様式建築で、重要文化財に指定され ています。博物館のホームページに は建物の細部の意匠についても詳しく説明されており、読み応えがあります。中の展示も興味深いものがあるのですが、今回 はパスです。ところで横浜正金銀行 といえば、神戸支店は現在、神 戸市立博物館と なっています。銀行建築は博物館に似合っているようです。

 さて上の左の写真は、日本興亜馬車道ビル。1922年(大正11年)建築の旧川崎銀行横浜支店を外壁保 存の形で残し、1989年に建てら れました。ごらんの通り、ピカピカのガラス張りビルに、古い壁が張り付いています。同じようなやり方は、神戸地方裁判所 でも行われましたが、新ビルが極め てシンプルな形であり、存在が空に溶け込むように見えます。しかしこちらの新ビルは、それなりに主張しており、かなり違 和感が残ります。外壁保存は難しい ですね。横浜第二合同庁舎のように、かなり大規模に復元するならともかく、「薄皮一枚」という形になってしまうなら、昔 の姿そのままにこだわらず、大 手町野村ビルのようなやり 方がいいのかなぁ、とも思います。
 ここ、馬車道周辺は、歴史建築とその保存を考えるフィールドワークには最適の場所になっています。

5)ハマの3つの塔

 さて、県立歴史博物館と日本興亜馬車道ビルの間の弁天通りを南東へ。みなと大通りに出て、少し海岸方面へ行ったところ に赤レンガに花崗岩の白いラインが 美しい横浜市開港記念会館があります。近くに横浜開港資料館というのもあって、ややこしいのですが、こち らは資料館ではなく、市民のための 公会堂のような施設です。1917年(大正6年)に横浜開港50周年を記念して建てられました。設計はコンペに当選した 福田重義。赤レンガに白い花崗岩を 配するスタイルは東京駅を建てた辰野金吾が得意とした様式で、フリークラシックスタイル、又は「辰野式」と呼ばれていま す。県立歴史博物館と並んで重文に 指定されています。
 で、目立つのが交差点に面した塔。高さは約33mで、これから紹介する県庁の「キングの塔」、横浜税関の「クイーンの 塔」に対し、「ジャックの塔」と呼 ばれて親しまれています。

 こちらは「キングの塔」を持つ神奈川県庁舎。裏側から見たところなので、塔が目 立ちません。正面は右 手の日本大通り側です。塔の高さは約49mです。
 1928年(昭和3年)に完成。「帝冠様式」と呼ばれ、戦前の一時期に流行した和風の屋根を載せ たスタイル。いかにも役所らしいいかめしい建物で、名古 屋市役所も似た感じです。

 みなと大通りが海岸に出会うところに建つのが、「クイーンの塔」を持つ横浜税関で す。正面玄関は左手 の海岸通側なのですが、港に面した側が正面のような造りになっています。時間が無くて、そちら側へ は行けませんでした。
 1934年(昭和9年)建築と、3つの塔の中では最後に建てられました。塔の高さは約51m。当 初の計画では47mと、県庁より低かったのですが、「国 の建物が、県庁に負けるとは何事か」という税関長の一声で、設計が変更になったそうです。2003 年に修復・増築工事が行われました。


 新港地区の赤レンガパークからはキングとクイーンが並ぶ、こんな風景が望めます。残念ながらジャックは見えませんでし た。昭和の初めには港に着いた船か らは3つの塔がはっきりと見えたのでしょう。

6)見事な大オーダー

 税関の横の海岸通を第二合同庁舎の方へ戻ります。高層ビルの神奈川県警本部をすぎると、16本 のコリント式列柱が見 事な横浜郵船ビルがあります。
 1936年(昭和11年)建築で、設計は和田順顕。長らく日本郵船横浜支店として現役のオフィス ビルでしたが、2003年6月に日本郵 船歴史博物館としてリニューアルオープンされまし た。有料ですが、だれでも内部を見学できるようになったのはうれしいですね。今回は中を見る時間が 無く、乗り物は好きなので本当に残念でした。

 建物の2階分以上にまたがる列柱を「大オーダー」と呼びますが、16本並ぶと壮観です。ギリシャ・ローマの神殿風で す。海岸通りに直行する関内大通りの 正面に位置し、関内大通りからはアイストップの役割も果たしています。残念ながら海岸通りはあまり広くないので、正面か ら全景を写すことができません。こ のページのトップに掲げたような、斜めからの写真になってしまいます。右側の写真は税関側から眺めた光景。ランドマーク タワーと並んでも、存在感は負けて いません。左の奥にはレンガ色の第二合同庁舎が見えています。

 以上、駆け足で巡った横浜でした。最後に参考文献と、文中にリンクした以外で参考にさせていただいたホームページをあ げておきます。(順不同)
 【参考文献】
・「建 築散歩24コース 東京・横浜近代編」山川出版社、2001年
・「日 本近代化遺産を歩く」JTBキャンブックス、2001年
 【ホームページ】
・「神 奈川の近代建築探訪
・「横 浜(関内地区)の近代建築」 (「裏辺研究所」の コンテンツのひとつ)
・「横 浜ライトアップ建造物」(「郷土文化財コレクショ ン」のコンテンツ)
・「横浜線沿 線散歩」おすすめです。「開 港の道」など、 横浜の街角を紹介したコンテンツは、大変読みやすく、内容も充実しています。

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